投資用語集

フラッシュ取引

英語
flash order
同意語
フラッシュ取引
関連語
レギュレーションNMS , スカルピング , アルゴリズム取引 , HFT , フロントランニング , ECN
カテゴリ
取引 ,

元々は早く注文を見た業者が注文に対して素早く対応することで注文を成立し易くし、流動性を高めるために導入された米国の証券取引所等の取引システムが顧客向けに提供するサービスの一つで、通常の最良気配提示市場(パブリックプール)へ注文を回送するプロセスの前に、自市場の参加者だけに、微小時間(0.03秒)、パートナーの流動性(プライベートプール)での約定可能性を模索するというワンクッションを挟む制度のこと。

レギュレーションNMSのオーダー・プロテクション・ルールでは、最良気配よりも劣った値段で執行することが禁じられているだけで、必ず最良気配提示市場に注文を回送しなければならないという訳ではないことから、プライベートプールでの約定が最良気配と同等又はより良い価格で行われる限りにおいては、フラッシュオーダーの制度自体は違法なものではなく、取引市場から見れば、自市場での執行可能性が向上し、参加者から見れば、注文情報を事前に把握し約定させる機会を得られ、投資家から見れば、価格改善の機会が得られ注文回送手数料も節約できるといったメリットがある。

しかし取引所等に入った売買注文情報を限られた投資家にだけ、他の市場参加者より0.03秒ほど早くオープンになるため、取引機会の格差を生むことに繋がっており、それを利用して取引所内に許可を得て設置した高速売買システムによりミリ秒単位のスピードで頻繁にスカルピングを行うアルゴリズム取引による取引手法(HFT)が可能となり、巨額の利益を上げるケースも見られるようになり、一般の投資家が不利益を被っているのではないかと指摘されるようになり、フラッシュオーダーを活用した高速トレーディングの是非が議論されるようになった。

また、フラッシュオーダーがもたらす情報格差や取引機会の格差を悪用して、フロントランニング等の不公正な取引が行われる可能性があり、特に規制の緩いECNが売買監視を適切に行えるのか疑問視されている。

2006年にダイレクト・エッジ(Direct Edge ECN)が導入した、「ELP(Enhanced Liquidity Provider)制度」が株式市場でのフラッシュオーダーの始まりとされ、シェアがそれほど高くなかったこともあり大きく問題視はされていなかったが、その後シェアを伸ばし存在感を急速に高める中、2009年5月に同社が取引所へのステータス変更をSECに申請した際に、ELP制度を維持しようとしたことが引き金となり大きな論争を巻き起こした。2009年9月にSECがフラッシュオーダーを禁止する規則改正案を提示したため、NASDAQ、BATS及びNASDAQ OMX BXは自主的に当該制度を廃止し、2011年にはCBSX(CBOE Stock Exchange)も追随し、現在も株式市場でフラッシュオーダーを維持しているのは、取引所化したダイレクト・エッジだけである。しかしオプション市場では、2004年1月のBOX(ボストン証券取引所のオプション市場)を皮切りに、CBOE及びISE等でもフラッシュオーダーが導入され、既に一般的なものとして定着し多く利用されているため、SECが提示したフラッシュオーダー禁止に係る規則改正案は、オプション市場からの強い反対を受け、現在も最終採択されていない。なお、オプション市場においては、ステップアップオーダー(Step-Up Order)と呼ばれることが多く、CBOEではHAL(Hybrid Agency Liaison)と呼ばれている。

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