財政の崖
- 英語
- fiscal cliff
- 同意語
- 財政の壁 , フィスカル・クリフ
2000年代に始まったブッシュ減税(2,210億ドル規模の所得税減税や株式譲渡益の軽減税率、代替ミニマム税(AMT)回避措置等)の2012年末の期限切れによる実質的な増税(2250億ドル規模)と、オバマの景気対策(950億ドル規模の給与税減税や給与税の被雇用者負担税率の引き下げや失業保険の給付期間の長期化等の失業保険緊急措置等)の失効(1190億ドル規模)、2011年に債務上限が問題になった際の民主党と共和党の合意によるトリガー条項(2012年末までに議会超党派委員会において1.2兆ドルの財政赤字削財策をまとめないと国防費を中心に10年間で最大1.2兆ドルの強制的な予算削減を実施)の発動による自動的な歳出削減(504億ドル規模)、オバマケアの実施に伴う増税・診療報酬の支払いカット等のその他の負担増(890億ドル規模)等の複合的要因により、2013年以降最大約5600億ドル(GDP比3.7%)の財政緊縮が起き、ブッシュ減税の終了と併せ大幅な財政赤字削減が見込めるが、実質的増税(約4.5%)と大幅な歳出削減のダブルパンチで、アメリカの景気が崖から落下するように悪化し、アメリカ経済のみならず世界経済に甚大な影響も与えるという懸念のことで、連邦準備制度理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長が使い出し広まった。
大きな政府を志向し、増税には賛成だが歳出削減には否定的な民主党と、小さな政府を志向し増税には大反対だが歳出削減には積極的な共和党との間で期限日となる2012年12月31日に妥協がなされ、富裕層を除く層を対象にした減税の恒久化と世帯年収45万ドル以上の富裕層に対する増税を実施して家計の平均税率を1.8%増に抑えた上で、歳出の強制削減を2013年2月28日までの2ヶ月間凍結する法案を可決し、実質増税と強制歳出削減のダブルパンチによる財政の崖は一時的に回避されたが、歳出削減については強制歳出削減凍結の延長後の期限日となる2013年2月28日になっても合意に至ることができず、2013年3月1日にオバマ大統領は強制歳出削減措置に署名した。
しかし、増税の問題は解決済みな上、金融緩和措置をとるとの憶測もあり、既に問題が折込済みなこともあり、アメリカや世界の景気に対する影響は限定的であった。