投資用語集

LIBORスキャンダル

英語
LIBOR scandal
同意語
LIBOR不正操作事件
関連語
LIBOR , リーマン・ショック , イングランド銀行 , 金融サービス市場法 , 金融行為監督機構 , 英国銀行協会 , NYSEユーロネクスト
カテゴリ
経済 , L

2012年夏に発覚した世界の主要な指標金利であるLIBORの不正操作事件のことで、2005年半ば?2007年秋にわたってLIBORのリファレンス・バンク(レート呈示銀行)であった英国投資銀行のバークレイズのトレーダーが他の金融機関のトレーダーやマネーブローカーと共謀してLIBORを不正操作し、自己の取引ポジションに利益を不正に誘導したことと、2007年8月?2009年初めまでの世界金融危機において、バークレイズが財務状況や信用リスクに関してマーケットやメディアがネガティブに評価することを避けるために、信用リスクを過小評価し、リスクプレミアムを低く見積もり、ドル建てLIBORを意図的に低く申告していた事件を指す。

特に後者については、リーマン・ショック後他行より高めであり、それを懸念したイングランド銀行(BOE)の副総裁で次期総裁の有力候補と目されていたタッカー(Paul Tucker)がバークレイズのロバート・ダイアモンド(Robert Diamond)経営最高責任者(CEO)に電話した内容が、ジェリー・デル・ミッシール(Jerry del Missier)最高執行責任者(COO)に伝えられた段階で、バークレイズによるLIBORの申告金利が他の銀行に比較して高すぎるから、引き下げよという指示であると理解され、申告金利を低めに虚偽申告したとされ、またタッカー副総裁は当時政権にあった労働党幹部の要請を受けていたと報じられ、BOEや労働党にも火の粉が降りかかる一大スキャンダルになった。

BOEは、バークレイズに虚偽申告を求めたことはなく、バークレイズが勘違いして虚偽申告したのだと弁明しているが、金融業は英国経済の大黒柱であるため金融界の健全性を粉飾的に示すLIBORの低め誘導を金融界だけでなくBOEも希望していた可能性が高く、BOEや英国政府の暗黙の意向があったとする説もある。

このスキャンダルを受け、バークレイズのダイアモンドCEOは辞任に追い込まれるとともに、バークレイズをはじめ不正操作にかかわったとされる他の金融機関に対しても各国の金融監督当局から多額の課徴金が課されている(UBSは14億スイスフラン、RBSは3億9000万ポンド、バークレイズは2億9000万ポンド等)。

不正を生んだLIBORの制度については、廃止や代替指標への置換といった大幅な改革ではなく、現在の枠組みを極力維持した上で、ガバナンスや監督の強化、仕組みの改善を通じて、質と信頼性を向上させるという方向での改革が行われ、LIBORが金融サービス法により金融行為監督機構(FCA)の監督下に置かれるとともに、1980年代からLIBORを運営してきた英国銀行協会(BBA)は運営責任を手放し、LIBORの算出・運営をインターコンチネンタル取引所(ICE)傘下のICEベンチマーク・アドミニストレーション(IBA)に移管させた。また、報告金利はできる限り取引データを反映したものとし、データでサポートできる範囲を絞るために、豪ドル(AUD)、ニュージーランドドル(NZD)、カナダドル(CAD)、デンマーククローネ(DKK)、スウェーデンクローナ(SEK)のLIBORレートが打ち切られ対象通貨が5通貨(米ドル(USD)、英ポンド(GBP)、日本円(JPY)、ユーロ(EUR)、スイスフラン(CHF))となるとともに、期間についても2週間、4ヶ月、5ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月の8期間が打ち切られ7期間(1日、1週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月)になった。

2017年7月に、英金融規制当局である金融行為監督機構(FCA)は、LIBORを2021年末に廃止し、ポンド翌日物平均金利(SONIA)に以降する方針を明らかにしている。

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